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日本心理療法研究所倫理綱領 草案

Version0.1 12/20/2000作成 作成責任者 村川治彦
 日本心理療法研究所が独自に倫理綱領を制定する意味は、我々の行う心理療法の実践における枠組みを明確にすることにあります。我々は心理療法の根幹をクライアントの自己治癒力にあると考えており、日本心理療法研究所に所属する心理療法家は自らが同意した倫理綱領を遵守することによってクライアントの自己治癒力に奉仕するその専門性を社会に対し主張できると考えます。

 この草案は、村本詔司著「心理臨床と倫理」、アメリカ心理学会の倫理綱領、International Mental Health Providers of JapanのCode of Ethicsなどを参考に作成しており、契約概念を中心にした枠作りを基本にしています。この概念自体が日本社会における心理療法に最適かどうかも含め、これから継続的に草案の見直しを行って参ります。現段階(2000年12月15日)では、まずこの草案を心理療法家、臨床心理学者、法律学者の方々に送ってあります。この方々から頂戴するご意見を反映させながら、基本的な思想、構成を整備し、より完成度の高い倫理綱領を作成していきたいと思います。

このような倫理綱領は、ある程度完成されたものを公表するのが本来の姿だと思います。しかし、現状では細かい心理療法についての倫理綱領は日本ではまだ整備されておらず、またクライアントの権利保護という意識もまだまだ不十分だと感じています。そこであえて草案をこの未完成な段階でホームページに公開し、そうした修正過程も含め様々な議論のプロセスもオープンにすることで、皆様と一緒に21世紀の心療法というものを考えていきたいと思います。ぜひ皆様のご意見、ご批判をいただきますようよろしくお願い申し上げます。

日本心理療法研究所は、心理療法を「21世紀の日本社会に心理療法を専門的職業として確立し、産業として成り立つ基盤を作る」というビジョンを掲げております。専門的職業である心理療法家としての職業倫理については、日本心理臨床学会倫理規程などがありますが、民間組織としての日本心理療法研究所は、法律やこうした公の団体の規定を遵守することは言うまでもなく、さらに厳重な倫理綱領を自ら設けることで専門職としての責任を明確にしていく所存です。

日本心理療法研究所倫理綱領』は、次の三部で構成されています。


第一部:「倫理規範」
今後いかなる環境変化が起こっても、日本心理療法研究所として実践すべき基本憲章とも言える普遍的なルール。

付:用語の定義:

第二部:「行動基準」
倫理規範を様々な活動の中で具体化していくうえでのガイドラインとなる。この行動基準は、日本心理療法研究所の活動の三つの側面に応じてそれぞれの部門別に詳細な倫理コードとして設定される

I:心理臨床部門
II:教育・トレーニング部門
III:研究・リサーチ部門
IV:経営部門

第三部:「実施要領」
これら倫理規範や行動基準を実践し、さらに違反行為があった場合に倫理委員会が対処する手続きについて定める。

付録:「クライアントの権利」

 
参考文献:
「心理臨床と倫理」村本詔司 1998
「Code of Ethics」   International Mental Health Providers of Japan 2000
「American Psychological Association Ethical Principles of Psychologists and Code of Conduct」
   American Psychologist December 1992
「Patient Bill of Rights」California Department of Consumer Affairs, Board of Psychology


第一部:倫理規範

 日本心理療法研究所(JIP)は「21世紀の日本社会に心理療法を専門的職業として確立し、産業として成り立つ基盤を作る」という共通のビジョンを達成するために設立された株式会社である。日本心理療法研究所倫理規範は、このビジョンを実行するために株式会社として行われるすべての活動に関して定めた共通の価値判断の基準である。
 

第1条:人権と人間的尊厳の尊重

 日本心理療法研究所に所属するものは何人たらずとも、すべての人々の基本的人権、人間としての尊厳を尊重し、そのプライバシーの守秘性と自己決定権を尊重する。特にクライアントあるいは潜在的にクライアントとなる者に対して、常にその人間的成長と健康を中心に考えた行動を取る。
 

第2条:社会的責任

 日本心理療法研究所に所属するものは何人たらずとも、自らの行為の社会性を認識し、自らの行為が常に他者の存在に支えられていることを自覚し、自らの行為が自らと他者の双方の幸福を促すよう最善の努力を図る。
 

第3条:専門家としての自覚

 日本心理療法研究所に所属するものは何人たらずとも、その与えられた職域の専門性と限界を自覚し、専門家として自らの見識と技能を常に高める努力をし、専門家としての責任を果たす努力を惜しまない。
 

第4条:倫理綱領遵守の義務

 日本心理療法研究所に所属するものは何人たらずとも、この倫理規範に則りそれぞれの立場での行動基準を遵守する。また万一行動基準に逸脱した場合、実施要領に従って倫理委員会が下した結論を受けいれる。


用語規定:

1)クライアント:日本心理療法研究所に所属する心理療法家と心理療法の契約関係を結んだ個人、カップル、家族。 

2)日本心理療法研究所に属するもの:心理サービス、教育、トレーニング、研究、リサーチに従事するしないに関わらずいかなる形であれ当研究所と何らかの雇用契約を結んでいる者。

3) 心理療法家:心理療法サービスを提供する者として日本心理療法研究所と特定の契約関係にある者。

4) 教育者:日本心理療法研究所において何らかの教育、トレーニングを行うものあるいは、それに類するサービスを提供する者として当研究所と特定の契約関係にある者を指す。これには日本心理療法研究所が主催する講演、ワークショップ、トレーニングプログラムの講師、心理療法のスーパーヴァイザーも含む。

5) 参加者:日本心理療法研究所が主催するワークショップ、教育、トレーニングプログラムに参加するもの。ただし特定のスーパーヴィジョン契約関係にあるものは、スーパーヴァイジーとして別に定義する。

6) スーパーヴァイジー:日本心理療法研究所の心理療法家とスーパーヴィジョン契約を結んでいる者。

7) 研究者:日本心理療法研究所に属し、研究リサーチに携わる者、あるいは当研究所が外部団体、個人に委託する研究、リサーチ活動に携わり、特定の倫理規定を含む契約関係にあるもの。

8) 倫理委員会を構成する外部の有識者:倫理委員会委員としての契約以外、日本心理療法研究所とのいかなる契約関係にもなく、倫理委員会の委員としてあらかじめ定められた謝礼以外のいかなる金銭的俸給も受けていない者。


第二部:行動基準

行動基準とは、日本心理療法研究所に所属するものが組織の一員として活動する際に、第一部の倫理規範に基づき倫理的行動を行うための基準となるものである。組織としての様々な役割、立場を考慮して以下の4つの部門毎にそれぞれの行動基準を定める。

I:心理臨床部門
II:教育・トレーニング部門
III:研究・リサーチ部門
IV:経営部門

I:心理臨床部門

第1条:心理療法とは
 心理療法家の専門性は医療、教育とは異なる独自の領域にあり、自らの行為が治療行為ではないことなどその限界を十分に自覚する。

第2条:クライアントの尊重
 心理療法家は、クライアントあるいは潜在的にクライアントとなる者に対して、常にその人間的成長と健康を中心に考えた行動を取る。

第3条:クライアントとの契約関係
 クライアントと心理療法家との関係は、専門家としての心理療法家とクライアントとの間で契約として結ばれる枠の中で成立する。この契約関係においては、契約関係の性質、予期される期間、料金などが取り決められ、可能な限り文書の形で締結される。この契約時に心理療法家は別紙に定める「クライアントの権利」をクライアントに渡し、クライアントが契約関係においてもつ権利を知らしめる義務を持つ。

第4条:契約関係の変更
 クライアントはいつ何時でもこの契約関係を終了する自由を保障される。一方心理療法家が病気、死亡、転居などやむを得ない事情でクライアントとの契約関係を変更する場合、その変更がクライアントに及ぼす影響を十分に考慮し、可能な限り速やかに対処をしなければならない。また、心理療法家が日本心理療法研究所との雇用関係を解消する場合においても、クライアントに最善のケアを提供する手段を整える義務を持つ。

第5条:クライアントと心理療法家の力関係
 クライアントが既に何らかのメンタルヘルスサービスを受けている場合クライアントが既に他の場所で何らかの精神医療サービスを受けている場合、心理療法家は自らとの契約関係がクライアントにとってどのような影響を及ぼすかを十分に考慮し、クライアント自身あるいはその法的な代理人、必要な場合は他のサービスを行っている機関や専門家と話し合い、クライアントが混乱することのないように努め、場合によっては契約関係に入らないことをクライアントに提案する。

第6条:クライアントと心理療法家の力関係
 心理療法家は、自らの専門家としての役割がクライアントに対してもつ潜在的な力関係の差に常に心を配ることが求められる。また、この力関係の差を意図的に増大したり、延長したり、それを悪用するような行動を決して取ってはならない。

第7条:契約された枠外における接触
 心理療法家は、クライアントと結んだ契約関係の枠外でクライアントと接触することに対し常に慎重な行動を取り、そうした接触が契約関係に対して有害な影響をもたらすことを極力避けなければならない。

第8条:契約以前に存在した関係について
 契約関係を結ぶ以前にクライアントと心理療法家の間に何らかの関係が既に存在した場合、その関係性が契約関係に及ぼす影響を慎重に吟味し、場合によっては契約関係を結ぶことを差し控える。

第9条:クライアントへの搾取
 心理療法家は、クライアントに対し経済的、性的、感情的に搾取することのないよう、常にクライアントの人間性を尊重しその尊厳を守る。心理療法家とクライアントとの力関係と搾取の問題を考慮し、心理療法家は契約において定められた以外の金銭的、物質的見返りをクライアントより受けない。

第10条:クライアントとの性的関係
 心理療法家は、クライアントとの間で肉体的にもまた言葉によっても性的関係あるいは恋愛関係を結ばない。また、以前に性的な関係にあったパートナーについては、クライアントとしての契約関係を結ばない。クライアントとの契約関係が終了した時点から少なくとも2年間は性的関係あるいは恋愛関係をもたない。
 たとえ定められた期間が過ぎたとしても、過去においてのクライアントと性的関係を結ぶ場合、心理療法家の側でその関係が搾取にあたらないことを示す責を負う。その責とは倫理委員会の調査に応じ、以下のことを文書で明らかにすることである。
1) 契約関係終結後からの経過期間、
2) 契約関係の期間と内容、
3) 終結の状況、
4) クライアントの個人史、
5) クライアントの心理状況、
6) クライアントあるいはその他の関係者に不利な結果を引き起こす可能性の有無、
7) 契約関係の間の心理療法家のいかなる言動も契約関係後にクライアントと性的関係あるいは恋愛関係に入ることをほのめかすものではなかった事を示す。

第11条:クライアントのプライバシーと守秘義務
 心理療法家は、自らのクライアントはもちろん自分以外の心理療法家と契約関係にあるクライアントに対しても、そのプライバシーを守る義務を負う。但し、この守秘義務にはいくつかの制限があり、それについて可能な限り早い時点でクライアントと話し合うことが求められる。また心理療法家がスーパービジョンを受けている場合や、研究、記録など何らかの理由で会話を録音する場合も、前もってそのことをクライアントと話し合う。
 守秘義務が制限を受ける場合とは、クライアント自身あるいは他の人の身体を傷つける明らかなおそれや意図がある場合、また幼児などの弱者に対する虐待が行われていることが疑われる明白な理由が存在する場合、その他法律によって定められた報告義務に関わる場合などである。また、第3章の実施要領で述べられるようにクライアントの側から心理療法家の倫理行動や契約関係に対して公式の訴えがあった場合も、守秘義務が制限される可能性がある。
心理療法家は契約を結ぶ時点でこれら守秘義務の制限についてクライアントに十分理解させる責を負う。

第12条:スーパーヴィジョン、および学会発表
 心理療法家が現在および過去にもったクライアントのケースをスーパーヴィジョンの場で提示する場合は、その旨をあらかじめクライアントに伝え同意を得る。またケースを学会発表あるいは論文として発表する場合も、クライアントの同意を得た上で特定のクライアントと同定されないような工夫を施しプライバシーの保護に十分努める。

第13条:クライアントへの差別
 心理療法家は、クライアントの性別、人種、国籍、年齢、宗教、民族、婚姻、性的な好み、政治的信念、身体的・精神的障害によってクライアントを差別しない。

第14条:心理療法家の専門的能力とサービス内容について
 心理療法家は、自らの教育、トレーニング、体験に応じて十分に資格のあるサービス及び技法のみを提供する。この場合の「資格」とは当該サービス・技法の専門家集団による認定だけでなく、そのサービス・技法がクライアントに及ぼす影響に対してその可能性と限界を認識し、自らの責任において対応が可能であることを意味する。
 万一資格がないサービス・技法を提供する場合は、資格をもったスーパーヴァイザーによる指導のもとでクライアントの同意を得た上でのみ行うものとする。また専門的な評価の定まっていない技法については、それを行う際に十分な注意を払い、それがクライアントにとって有益な結果をもたらすことを自らの専門性に照らして明らかにする最大限の努力をする。

第15条:他の専門家への紹介
 心理療法家は、クライアントに必要なサービスを自らが提供できないと認めた場合、あるいは他の専門家のサービスがクライアントにとってより必要性が高いと判断した場合、適切な専門家をクライアントに紹介する義務を持つ。

第16条:専門的能力の向上
 心理療法家は、常にクライアントと社会の新しいニーズを敏感に察知し、自らのよって立つ理論的、技術的限界を常に克服するよう、絶え間ない努力を行わなければならない。心理療法家は自らの専門的能力を向上させる努力を常に怠らず、継続的に教育、トレーニング、スーパーヴィジョンを受ける。

第17条:心理療法家の個人的問題について
 心理療法家は、自らの個人的問題がクライアントとの契約関係に与える影響について常に注意し、もし自らの個人的問題がクライアントとの関係に何らかの影響をもたらす可能性がある場合は、可能な限り早期にスーパーヴァイザーあるいは同僚の心理療法家の援助を受け、クライアントに与える影響を最小限に留める。

第18条:心理療法家の経歴などの情報について
 心理療法家は、自らの経歴(学位、資格、トレーニングの内容と期間、所属団体、著作、研究履歴など)および要求する料金やサービス内容等について、クライアントに正確に伝える義務を持つ。また、クライアントの求めがあれば関連する文書などでその正確性を証明しなければならない。心理療法家はまたそれらの情報について公の場で意図的に誤った表現や誤解を招く表現をしない。「公の場」には、出版物やメディアで使用されるインタビューやコメント、チラシ、履歴書、講演などを含む。
 
第19条:他の組織からの要求と守秘義務の衝突
 クライアントとの契約関係に関して他の公的組織あるいは第三者から何らかの介入を受け、それが倫理綱領に逸脱する行動を引き起こす可能性のある場合、心理療法家は倫理綱領および逸脱する内容について第三者に説明し、可能な限り倫理綱領を遵守する。    

第20条:助言
 心理療法家が自らの置かれている特定の状況や自らの行動がこの行動基準に則るかどうか不確かな時には、まず他の心理療法家に相談し助言を求める。また必要な時には、その是非を当研究所の倫理委員会に諮問する。行動基準に反しているあるいはその可能性のある状況や行動を認めていながら適切な行動を取らない場合、それ自体が倫理綱領に反するものであることを認識する。


II.教育・トレーニング部門

第1条:参加者の人権とプライバシーの尊重
 日本心理療法研究所が主催する講演、ワークショップ、トレーニングプログラム、スーパーヴィジョンを企画、担当する教育者(以後教育者)は、参加者の人権とプライバシーを尊重し、常にその人間的成長と健康を中心に考えた行動を取る。

第2条:教育内容の正確さと限界
 教育者は自らが教えたりトレーニングする内容が学問的に正確なものであることに常に留意する。また、特別の訓練を必要とする内容については、その資格をもたない限り教えない。

第3条:記述の正確さ
 教育者は、企画、担当する教育プログラムの宣伝、広告の記述において、その目的、内容、教育者自身および講師の経歴(学位、資格、トレーニングの内容と期間、所属団体、著作、研究履歴など)料金などについて可能な限り正確な情報を提供する。

第4条:教育者と参加者、スーパーヴァイジーの力関係 
 教育者は、教える側としての役割が参加者やスーパーヴァイジーに対してもつ潜在的な力関係の差に常に心を配り、参加者を経済的、性的、感情的に搾取しない。また、この力関係の差を意図的に増大したり、延長したり、それを悪用するような行動を決して取らない。

第5条:スーパーヴァイジーとの性的関係
 教育者はスーパーヴァイジーと肉体的にもまた言葉によっても性的関係あるいは恋愛関係を結ばない。スーパーヴァイジーとの教育、トレーニング関係が終了した時点から少なくとも2年間は性的関係あるいは恋愛関係をもたない。たとえこの期間が過ぎていても、以前のスーパーヴァイジーとそうした関係を結ぶ場合、教育者の側でその関係が搾取にあたらないことを示す責を負う。その責とは以下のことを明らかにすることである。
1) 契約関係終結後からの期間、
2) 契約関係の期間と内容、
3) 終結の状況、
4) スーパーヴァイジーの個人史、
5) スーパーヴァイジーの心理状況、
6) スーパーヴァイジーあるいはその他の関係者に不利な結果を引き起こす可能性の有無、
7) 契約関係の間の心理療法家のいかなる言動も契約関係後にスーパーヴァイジーと性的関係あるいは恋愛関係に入ることをほのめかすものではなかった。

第6条:プライバシーと守秘義務
 教育者は、参加者、スーパーヴァイジーのプライバシーを守る義務を負う。また参加者同士にも守秘義務についての情報を与え注意を促す義務を負う。
 但し、この守秘義務にはいくつかの制限があり、参加者、スーパーヴァイジーにそれについて説明する。また教育者が教育、研究目的で会話を録音、録画する場合も、前もってそのことを参加者、スーパーヴァイジーと話し合う。
 守秘義務が制限を受ける場合とは、クライアント自身あるいは他の人の身体を傷つける明らかなおそれや意図がある場合、また幼児などの弱者に対する虐待が行われていることが疑われる明白な理由が存在する場合、その他法律によって定められた報告義務に関わる場合などである。また、第3章の実施要領で述べられるように教育者の倫理行動や契約関係に対して公式の訴えがあった場合も、守秘義務が制限される可能性がある。

第7条:スーパーヴィジョン、および学会発表
 教育者が現在および過去にもったクライアントのケースをスーパーヴィジョンの場で提示する場合は、その旨をあらかじめクライアントに伝え同意を得る。またケースを学会発表あるいは論文として発表する場合も、クライアントの同意を得た上で特定のクライアントと同定されないような工夫を施しプライバシーの保護に十分努める。

第8条:参加者、スーパーヴァイジーへの差別
 教育者は、参加者、スーパーヴァイジーの性別、人種、国籍、年齢、宗教、民族、婚姻、性的な好み、政治的信念、身体的・精神的障害によって差別をしてはならない。


III:研究・リサーチ部門

第1条:研究、リサーチの目的と必要性
 日本心理療法研究所は、心理療法はもとより教育・トレーニングプログラム、スーパービジョンなど提供するすべてのサービスの本質を社会に対して明確に示し、その向上に絶え間ない努力を続けなければならない。そのために、日本心理療法研究所はもとより国内外の専門家と協力しながら心理療法の研究、リサーチを進める。

第2条:研究の正当性
 研究、リサーチの目的と方法は、その時点での人間科学の成果を踏まえ、倫理的・科学的に妥当なものでなければならない。

第3条:プライヴァシーの保護
 いかなる研究、リサーチにおいてもその研究に参加するものの人権と利益を尊重し、プライバシーを守らなければならない。

第4条:説明と同意
 研究、リサーチにおいては、その研究に参加するもの(クライアント、スーパーヴァイジーを含む)の自発的同意が必要である。ここでいう自発的同意とは、物理的、心理的、経済的威圧のない状態において、参加者がその研究、リサーチの目的、内容について十分な説明を受け、自らの判断において承諾するか否かの意志決定を行った上で、自発的に表明された同意を意味する。特にテープやビデオなどで記録が取られる場合には、前もって文書で参加者の同意を確認する。 

第5条:研究成果
 研究者は、研究結果について正確にその成果を発表し、万一重要な誤謬を発見した場合、その誤謬を訂正する最大限の努力をする。

第6条:研究成果の公表
 研究・リサーチにおいては、成果の公共性を常に重視し、当研究所を含め特定の個人、団体の利益、不利益に応じてその成果を公表するか否かを決定しない。


IV:経営部門

第1条:社会的責務の認識
 日本心理療法研究所は、社会における心理療法サービス事業の信用確立を当研究所の社会的責務と認識し、企業としての活動の中で倫理綱領の遵守を最優先させる。
 
第2条:プライバシーの保護
 日本心理療法研究所に属するすべての者はクライアント、あるいは教育、トレーニング、研究活動への参加者についての情報を、業務とは関係のない他者に漏らさない。
但し、当クライアントと心理療法契約を結んでいる心理療法家あるいは、その参加者の行動に関係している教育者、研究者に対してはこの限りではない。

第3条:反倫理行為の報告
 日本心理療法研究所に属するすべての者は、他の所員が倫理綱領に反した行動をとっているのを発見した場合、速やかに第三部で定めた手続きをとる。


第三部:実施要領

はじめに
 日本心理療法研究所は、所属するものすべてが倫理綱領を理解し、遵守するための必要な教育、トレーニングを行う。その上で、日本心理療法研究所に属するものが倫理規範および行動基準に違反する行為を行った場合、組織としてそれを裁定する要領を定める。

第1条:日本心理療法研究所倫理委員会(倫理委員会)の役割と構成
 倫理委員会は、日本心理療法研究所におけるあらゆる行為が倫理綱領に則り、クライアント他当研究所のサービスを受ける全てのものを保護するために設立される。その役割は、1)日本心理療法研究所倫理綱領の制定、変更、2)当研究所に属するすべてのもに倫理綱領を周知し、一般社会に対して広報する。3)当研究所に属するものが倫理綱領に反する行為を行った公式な訴えがあった場合に、その状況を調査し当倫理綱領に照らし適切な助言、指示、命令、処罰を下す。4)すべての関係者プライバシーの保護を優先させることを前提に、できる限りその調査のプロセスと調査結果、処罰内容を社会に公表する。
倫理委員会は、日本心理療法研究所に属する2名と外部の有識者2名の計4名から構成される。倫理委員会の委員長は委員の互選とする。委員と訴えられたものの関係が何らかの形で状況判断に多大な影響を及ぼす可能性のある場合は、他の委員の同意を得た上で委員を一時的に交替する。

第2条: 非公式の解決と公式の訴え
 日本心理療法研究所に属するものは、倫理規範あるいは行動基準に逸脱する行為が行われているのを発見した場合には、まず当事者に対してその問題に対しての注意を促し、適当と思われた場合は守秘義務が破られない範囲で何らかの非公式な介入を行う。
この非公式な介入が不適切なほど状況が深刻である場合、あるいは非公式な介入がうまくいかなかった場合は、その状況に相応しいさらなる行動を取る。但し、この場合も守秘義務に反しないように細心の注意を払う。この行動には日本心理療法研究所の倫理委員会への報告、また場合によっては当該者の属する外部団体(日本臨床心理士会など)への報告も含む。

第3条:倫理委員会への公式の訴え
 倫理委員会への訴えは、日本心理療法研究所に属するものによる倫理規範あるいは行動基準に逸脱する行為を知るものは、当研究所に属するか否かに問わずいかなる者でもなすことができる。
公式の訴えは、1)倫理綱領に反する行為を行った者の氏名(当事者)2)その行為によって何らかの被害を被ったものがいればその氏名および連絡先(関係者)3)当該行為の行われた状況についての説明を日本心理療法研究所倫理委員会委員長宛に書面で提出することでなされる。この書面には、守秘義務が制限されることを2)の関係者が同意することを示した文書を必ず添付する。

第4条:倫理委員会の召集
 倫理委員会委員長への書面の提出を持って当該事項の調査が開始される。

1)まず、倫理委員長は当該事項に関し、倫理綱領に反する調査を行う十分な理由があることを確認する。
2)もし委員長が倫理委員会を召集するに十分な理由がないと判断した場合、委員長は30日以内に関係者にその旨を伝え、当事者を含めた協議に入る。この場合委員長は両者と協議し協議内容を公表するかどうかを決定する。その場合両者のプライバシー保護への十分な配慮を行う。
3)関係者が2)のプロセスに納得しない場合、あるいは訴えが当事者への重大な罰則を含むと倫理委員長が判断した場合、委員長は倫理委員会を召集する。

第5条:倫理委員会による調査の手順
 倫理委員会委員長は倫理委員会を召集すると、まず当該事項に対しどのような調査を行うべきかを決定し、そのプロセスを30日以内に当事者、関係者に通知する。
1) まず当事者には、a) 関係者が訴えた当事者の行動 b)その行動が関係している倫理綱領の項目を明示した「倫理審査通知書」を送付する。この「倫理審査通知書」は、訴えられた反倫理行為が現実に行われたか否か、あるいは当該行為が倫理綱領に反するか否かを断定するものでなはない。
2) 当事者は、この「倫理審査通知書」の受領後30日以内に、倫理委員会に対し文書で返答をしなければならない。
3) 2)の返答後、倫理委員会は当事者本人を招いて事情を聴くなどの調査を行う。倫理委員会の調査プロセスにおいて当事者および関係者は、原則として本人自身が対応する。法律家、心理療法家、あるいは他の第三者に相談する権利は保持するが、それらの人々が本人に代わって代理人としてこのプロセスに関わることは出来ない。但し、倫理委員会が必要と認めたときにはこの場合ではない。
4) 関係者はいつ何時でも、調査プロセスがどの段階にあるかについての情報を倫理委員会に請求することができる。

第6条:倫理委員会による決定
 倫理委員会は調査プロセスの結果に基づき、倫理委員会の召集後90日以内に以下の決定をなす。

1) 倫理規範に反する行為がなかった。
2) 懲戒:倫理規範に反する行為があったが、違反の程度が他者を害したり、専門性を著しく損なうほどのものでなかった場合。
3) 譴責:倫理規範に反する行為があり違反の程度が他者を害したり、専門性を損なうものであったが、その程度が免職に値するほどのものではなかった場合。
4) 免職:倫理規範に反する行為があり、違反の程度が他者を害するかあるいは専門性を著しく損なうものである場合。

第7条:倫理委員会による助言、指示、命令
 倫理委員会は第6条の決定とは別に当事者に対し以下のいずれかの助言、指示、命令を必要に応じて行うものとする。
倫理委員会は当事者がその助言、指示、命令に従っているかどうかを一定期間監視する。倫理委員会によるこれらの助言、指示、命令に従わない場合は、それ自体反倫理行為と見なされる。
1) 当該の反倫理行為を止める。
2) 当該の反倫理行為を矯正するための何らかの行動を取る。
3) 倫理委員会が推薦するスーパーヴァイザーによるスーパーヴィジョンを受ける。
4) 教育、トレーニング、あるいは個人的指導を受ける。
5) 必要な治療を受けるかべきかどうかの専門的査定を受ける。もし治療が必要と判断された場合は、それに相応しい治療を受ける。

第8条:倫理委員会による決定の通知
 倫理綱領違反に関する調査の終了後、倫理委員会はその決定事項、指示、助言、命令を当事者、関係者、日本心理療法研究所の役員会に通知する。この通知に基づき役員会は、心理療法サービス提供者としての社会的責務を果たし、日本心理療法研究所の社会的信用を確保するために必要な行動を社内外に対して取る。これには、日本臨床心理士会他の当事者が所属する専門職団体への通知を含む。

第9条:他の専門職団体による倫理行動の審査
 日本心理療法研究所に属するものが、同時に属する他の専門職団体によって倫理行動の審査を受けた場合、あるいはいずれかの国家の法律に違反する行為で訴えられた場合、倫理委員会委員長はその者に対して文書による説明を要求し、倫理委員会による調査など必要な行動を取る。

第10条:過去の反倫理行為
 日本心理療法研究所に属するものが行った過去の行為が倫理綱領に反することが明らかになった場合、倫理委員長はその件について当事者に説明を求め、その返答をもって倫理委員会が必要な調査を行うかどうかを決定する。過去の行為については倫理委員長がその行為について知った日から遡り10年前までとする。但しそのケースが未成年を被害者とする場合は期限を設定しない。

第11条:倫理委員会の調査における守秘義務
 倫理委員会の調査に関わるあらゆる情報はプライヴァシーの保護のために守秘義務で守られる。調査に関するファイルは倫理委員会において厳重に管理され原則的に公表されない。但し、法律にもとづく請求があった場合、あるいは専門職団体の倫理委員会の公式の要請があった場合、あるいは倫理委員会が特に情報の公開および提供が当事者あるいは関係者の保護に必要だと判断した場合、あるいは一般社会の利益になると判断した場合はこの限りではない。


クライアントの権利

日本心理療法研究所のクライアントとしてあなたは以下の権利を保持しています。

1) 心理療法家の専門的能力についての情報をいつでも請求し受け取ることができます。この情報には、心理療法家の資格、学歴、トレーニング歴、経験、所属学会、専門分野とその限界を含みます。

2) 料金、支払方法、面接の回数、(休暇ややむを得ない事情での)面接の振り替え、キャンセルの場合の取り決めについて、契約を交わす前に書面で情報を得ることができます。

3) あなたの助けになるような応対を、あなたの人格を尊重した形で受けることができます。

4) 性的、身体的、感情的に傷つけられることのない、安心のできる面接空間をもつことができます。

5) いつでも自らの受けている心理療法について質問することができます。

6) 答えたくない質問には答えなくても良いし、明かしたくない情報は明かすことを拒否することができます。

7) この心理療法であなたがどのように変わってきたかについて心理療法家に情報を求め、それを受け取ることができます。

8) 守秘義務が制限される場合、あるいは心理療法家が他の人にあなたについての情報を開示することを法的に求められる場合は、それについて心理療法家からの説明を受けることができます。

9) あなたのケースについて心理療法家がスーパーヴァイザーやコンサルタント、学生、その他の人たちと話をする場合は、それについて心理療法家から説明を受けることができます。

10) 一切の義務あるいは脅しを受けることなく、特定のタイプの心理療法を拒否したり、契約関係をいつでも終了することができます。

11) テープなどで面接を録音されることを拒否できます。あるいは、あなたの方から面接を録音することを要求できます。

12) 見立て、面接過程での変化、行われている心理療法の種類についての情報を含む自らについてのファイルの要約を請求し、受け取ることができます。

13) 心理療法家が法律あるいは倫理綱領に反する行為をした場合、それを倫理委員会あるいは司法当局に訴えることができます。

14) あなたの受けている心理療法あるいは心理療法家が行う方法について、いつでも他の心理療法家の意見を聞くことができます。

15) あなたが選んだ他の心理療法家あるいは機関にあなたのファイルのコピーを転送してもらうことができます。
 
 

カリフォルニア州消費者局心理学課作成資料からの引用

※ 州消費者局心理学課(Board of Psychology, Department of ConsumerAffairs)は、心理学者を管轄する州政府の1部門。この部門は、心理療法家やソーシャルワーカー、医者だけでなく、建設基準官や車の修理工まで200以上の専門職のライセンスを消費者保護の観点から管轄している。日本ではむしろ通産省に近い?








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